太陽誘電Wi-SUN無線モジュールにシリコンラボEFM32が採用

太陽誘電は、新規事業の一環として「Wi-SUN無線モジュール」を開発した。これには、シリコンラボラトリーズ(以下、シリコンラボ)のARM® Cortex®-M3マイコン「EFM32LG295F256G-E-BGA120R」と無線チップである「Si4461-C2A-GMR」が搭載されている。マイコンと無線チップを同じ半導体ベンダーのものを採用することで、スムーズに開発できた。ここでは、太陽誘電のWi-SUN無線モジュールの概要や採用チップの特長などを聞いた。

メインイメージ
集合写真(左より)
シリコンラボラトリーズ シニアFAE 高山 毅 氏
シリコンラボラトリーズ フィールドマーケティングマネージャー 椿原 潤吾 氏
シリコンラボラトリーズ 代表取締役社長 深田 学 氏
太陽誘電株式会社 高崎グローバルセンター 新事業推進本部 応用開発推進室 部長 関口 象一 氏
太陽誘電株式会社 高崎グローバルセンター 新事業推進本部 応用開発推進室 無線商品推進グループ 係長 三浦 一郎 氏
太陽誘電株式会社 高崎グローバルセンター 新事業推進本部 新事業ビジネス推進室 産機推進部 FAE 副長 丸山 英之 氏
太陽誘電株式会社 高崎グローバルセンター 新事業推進本部 応用開発推進室 無線商品推進グループ 伊藤 宜博 氏
株式会社マクニカ テクスターカンパニー ストラテジックプロダクト事業部 プロダクトセールス部 第2課 沼谷 友輔 氏
株式会社マクニカ テクスターカンパニー ストラテジックプロダクト事業部 技術部 第1課 課長 佐藤 誠 氏

Wi-SUNは日本発の無線通信規格として普及の兆し

IoT(Internet of Things)市場が広がりを見せている。IoT実現に向けて、さまざまな規格が提唱されているなか、国内ではWi-SUN(Wireless Smart Utility Network)が注目されている。サブギガHz帯(900MHz前後)の周波数帯の電波を用いることで、Bluetoothや無線LANの2.4GHz帯よりも電波の飛距離が長く、最大1km弱の距離での相互通信を行える省電力型の無線通信規格である。日本の情報通信研究機構(NICT)が規格の標準化を主導してきたもので、いわば日本発の無線通信規格といえる。

太陽誘電では、このWi-SUN無線モジュールを開発した。「太陽誘電は、いままで民生向けが売上げの大半を占めていましたが、2014年からの中期計画(3カ年)では、自動車電装品や産業機器などで売上げ比率を高めていく計画をしており、そのひとつとして、Wi-SUN無線モジュールに注力していきます」(太陽誘電 関口氏)という。

もともと太陽誘電は無線通信技術に強く、Bluetoothや無線LANなどに対応した製品を提供してきた実績がある。「今後狙う産業機器市場に向け、太陽誘電が得意とする無線技術を活かしたセンサーネットワークを狙うことにしました。そこで、920MHz帯を使用するWi-SUNとなりました」(太陽誘電 三浦氏)。

太陽誘電のWi-SUN無線モジュールの開発は2012年頃スタートした。「2012年末くらいからWi-SUN規格が聞こえ始めており、市場調査を行ったところ、国内ではWi-SUN規格が有力だろうということでした」(関口氏)。太陽誘電の920MHz帯無線製品は、Zigbeeからスタートした。「2012年頃の920MHzの無線通信は、ZigbeeとWi-SUNで勢力争いをしており、太陽誘電は搭載するプロトコルによって、いずれの規格にも対応できるようにしていました」(三浦氏)。

シリコンラボのマイコンEFM32と無線チップを採用

太陽誘電のWi-SUN無線モジュールの大きな特長として、低消費電力、業界トップクラスの省サイズ、用途に応じたマイコンの載せ換えが簡単に出来るようになっている。「太陽誘電の他の無線関連製品とくらべると異様なほど大きいのですが、業界トップクラスの省サイズになっています」(三浦氏)。

太陽誘電のWi-SUN無線モジュールには、シリコンラボ製のマイコンと無線チップが採用された(図1)。マイコンは、シリコンラボのARM Cortex-M3を搭載したLeopard Geckoシリーズの「EFM32LG295F256G-E-BGA120R」である。シリコンラボのマイコンは同じシリーズなら内蔵機能が変わってもピンとソフトウェアが互換なので、用途に応じてマイコンの載せ換えが簡単にできる。「無線モジュールはアプリケーションなどによって要求仕様が異なるのですが、簡単にチップを載せ換えられるので効率良く対応できています」(三浦氏)。同じモジュールをWi-SUN規格だけでなく、Zigbee規格など別のプロトコルで動作させたいときなどには、フラッシュメモリのサイズを変えるだけで自由に対応できるという。

図1

図1:Wi-SUN無線モジュールのブロック図。

ARMコアであることも大きな特長である。「ARMコアは、開発環境が揃っていることに加え、世界中での採用実績が豊富にあります」(太陽誘電 伊藤氏)。しかも、コアのラインアップが豊富で、目的に応じた選択が可能であることも良い点だという。Wi-SUNモジュールの納品先でもARMコアの採用実績が多い。「サポートする場合、お客様と太陽誘電側の環境が同じということも、効率的な開発に繋がることだと思っています」(三浦氏)。

無線チップはシリコンラボの「Si4461-C2A-GMR」を採用。マイコンと無線チップを同じシリコンラボ製品を採用したことで、責任の所在をはっきりさせることができ、スムーズに効率的に開発を行えたという。マイコンと無線チップが競合した場合、お互いに情報を出したがらないといったことも良く聞く話だ。

EFM32がWi-SUN無線モジュールの低消費電力化に貢献

太陽誘電のWi-SUN無線モジュールの低消費電力化に貢献しているのが、採用されたシリコンラボのEFM32である。「EFM32のEFは、energy friendlyのことで、もっとも低消費電力なマイコンを実現するシリコンラボ独自の技術です」(シリコンラボ 椿原氏)という。ちなみに、シリコンラボでは、ARM Cortex-Mシリーズを採用したEFM32シリーズと8051をベースとした8ビットのEFM8シリーズを展開している。

「シリコンラボの製品を選んだのは、Wi-SUN無線モジュールとして業界トップクラスの低消費電力を追求していくためでした。性能や消費電力などのいずれの面でも、シリコンラボの製品は将来性がありました」(三浦氏)。

EFM32の低消費電力化は、ARMコアの採用、省電力時の周辺機能を使いやすくするための独自機能PRS(Peripheral Reflex System)の搭載、LESENSE(外部センサーI/F)、ウルトラローリークを始めとする徹底した低電力設計、充実のツール群などが支えている。「IoTのアプリケーションは、パフォーマンスが高いことは当たり前であり、なんといっても低消費電力が必須です。シリコンラボではenergy friendlyによって、マイコン全体の低消費電力化を実現しています」(椿原氏)。

EFM32には、コアそのものの低消費電力化に加え、コアのスリープ時にペリフェラルに仕事を行わせるシリコンラボの独自機能がある、それがPRSだ。「ペリフェラルは自立で独自に動く時代です」(椿原氏)とのことだ。PRSはペリフェラルから別のペリフェラルを直接起動できるのでCPUの介在は不要となる。さらにLESENSEはCPUがスリープのまま、同様のことをハードだけで実行できる機能であり特許技術である。

図2

図2:Wi-SUN無線モジュールの搭載例。

セキュリティ機能をハードウェア化して搭載

開発のしやすさも重要である。シリコンラボでは、EFM32とEFM8で共通で使える統合開発環境「Simplicity Studio™」を提供しており、シリコンラボのホームページから無償でダウンロードできる。Simplicity Studioは、コードサイズ無制限のGCCコンパイラ、デモ、ライブラリ、サンプルコード、消費電力と Capsense プロファイラツール、コンフィギュレータ、簡単更新サポートパッケージ、ドキュメントなどが揃った開発環境である。

「Simplicity Studioは、ソフトウェアの経験があれば、誰でも違和感なく使えます。たとえば、WindowsのGUIのなかで、必要な部分をクリックするといった直感的な操作で開発できます」(伊藤氏)。Simplicity Studioではデバッグも可能であるという。シリコンラボの評価ボードにICEも搭載されており、それとパソコンをUSBで繋げば、直ぐにデバッグ作業に入ることができる。椿原氏は、「エコシステムとして、リアルタイムOSやサードパーティ製のOS、コンパイラやデバッグツールについてもサードパーティと連携して整備しています」という。

シリコンラボでは、従来の無線チップとマイコンをワンパッケージにしたEZR32シリーズをすでに発売しており、ワイヤレスSoCという無線とマイコンをワンチップ化したEFR32シリーズも展開していく。「ワイヤレスSoCは、最新のプロセスを採用しており、従来品と比べ低消費電力化をさらに進めています」(椿原氏)。

インターネットに接続されるIoTでは、セキュリティの重要性も高い。「シリコンラボでは、128または256ビット・キーのAES、楕円曲線暗号(ECC)、SHA-1およびSHA-224/256などの強力なセキュリティ機能をハードウェアでサポートしています。おそらくここまで用意しているのはシリコンラボくらいでしょう」(椿原氏)。ハードウェア化したことで、ソフトウェアのみの製品よりも、進化するIoTのセキュリティ要件を低消費電力ながらも高いレベルで実現することができる。

幅広い周波数帯をカバーした高感度のトランシーバ

無線チップとして採用されたシリコンラボの「Si4461-C2A-GMR」は、142MHz~1050 MHzまでの幅広い周波数帯をカバーした高感度のトランシーバである。「無線チップは、感度が良いことは当たり前でして、不要輻射(Emission)や受信妨害除去(Immunity)性能などの電波妨害性能が優れていることが求められます。シリコンラボの無線チップでは、初段~ミキサーにかけてのリニアリティが高いことから、SAWフィルタなどの余計なフィルタを極力使用することなく高感度と耐妨害性能を両立できます」(椿原氏)。

「リニアリティが低いとインターモジュレーションを起こしやすいのですが、シリコンラボの無線チップはリニアリティが高いためそういった心配もありません」(伊藤氏)。SAWフィルタの帯域内に妨害波があった場合でも、シリコンラボの無線チップであれば、それらの心配が無用になる。

さらに、前述のように142MHz~1050MHzまでの幅広い周波数帯をカバーしており、169MHz帯、300/400MHz帯、868MHz帯、915/920MHz帯と各国の主要な周波数帯を1つのチップでまかなえる。「国内市場ばかりでなく海外市場も見た場合、ひとつのチップでここまでの周波数帯をカバーしているので、横展開が容易になります」(丸山氏)という。

「シリコンラボは、マイコンと無線チップを単体で考えるのではなく、それらにセンサーなどを追加したIoTのセンサーネットワークなどのアプリケーションとして必要なパーツは何かという考えを5年程度前からしてきました。それに対して必要な部材を買収したり、新たに開発したことで、トータルソリューションとして提供できています」(シリコンラボ 高山氏)。

今後もシリコンラボと一緒にやっていきたい

今後の展開について三浦氏は、「基本的にWi-SUNを中心とした開発を進めますが、それは半導体ベンダーに頼るところが大きく、そうなるとシリコンラボのロードマップに追従することになります」という。もうひとつの方向性として、モジュールをベースとしたシステムビジネスへの広がりも考えているとのことだ。「その場合、サブギガ帯に固執せず、無線LANなどと組み合わせた製品となるでしょう。半導体ベンダーのチップのインテグレートとともに各デバイスのインテグレートも進めていきます」(三浦氏)。

「国内はサブギガ帯ですが、海外では2.4GHz帯が多いのも事実です。そこでもシリコンラボは活躍しており、今後もシリコンラボと一緒にやっていきたいと思っています」(丸山氏)。

最後にシリコンラボの深田氏は、「シリコンラボは、今年で20周年になりました。売上げは2015年で700億円程度ですが、最大手以外で20年生き残った半導体ベンダーは少ないでしょう。なぜシリコンラボは20年もったのか。ひとつはテクニカルサポートが良かったから、それとコア技術が非常に優れていたからだと自負しています」という。さらに、「現在、トータルで3万社のお客様に採用いただいており、非常に幅広い層のお客様に利用していただいています。こういったことも堅実な売上げを維持していることの表れでしょう。現在IoT関連のビジネスは60%程度になっており、この分野をさらに拡大していきます。太陽誘電様のような実力のあるモジュールベンダーのパートナーとなって共に発展していくことはたいへん喜ばしいことだと思っています」と結んだ。

APS EYE'S

IoTに省電力と無線技術は欠かせない存在だ。MCUとRFを単に組み合わせただけでは、成しえない技術が両社にはある。無線技術に造詣が深い太陽誘電とシリコンラボは、IoTを極めていける数少ないベンダーに違いない。